みんなが幸せになれるように
きっとみなさんが願っていること。「子どもがこれから先もずっと幸せでいてくれますように。」
私には子どもが2人います。下の子には発達障がいがあり、特別支援学校に通っています。
発達障がいについてはメディアで取り上げられることも増え、当事者でなくても耳にする機会が増えてきていると感じています。ただ、発達障がいと言っても実際は様々で、親ですらよくわからないことはたくさんあります。
さて、障がい児本人の話ではなく、今回は上の子の話をしたいと思います。
上の子には今まで様々な我慢を強いてきました。お出かけは短時間。公園で遊ぶと言ってもひたすら下の子を追いかける。宿題も下の子が騒げば集中できません。下の子の成長の遅さを心無い言葉で指摘されたことも一度ではありません。生活のすべてにおいて下の子を優先させる毎日に、嫌な思いもたくさんしたでしょう。悩みもあったでしょう。
それでも小さい頃は文句やわがままも言えた上の子ですが、いつの間にか黙って我慢をしてくれるようになりました。成長だと嬉しく思う反面、そうさせているのは自分なのだと、もっと上の子の声を聞いてあげたかったなと後悔している事がたくさんあります。だって、上の子も下の子もどちらも大切な子どもなのですから。
障がいを持って生まれた下の子が学校を卒業した後、幸せになれるのか不安は尽きません。親としてできる限りの努力をしていくつもりです。また、社会が障がいを今以上に受け入れ、生活に困らない仕組みが整う事を願います。そしてなにより、障がい者のきょうだいについても相談できる場所、話ができる機会がもっと増え、一人で抱え込まない環境を多く作りたいと考えます。障がい者をきょうだいに持つ子も、自分の将来に我慢をせず幸せになれるように。
個育て
息子は生まれてすぐに呼吸が安定せずにNICUに運ばれました。ダウン症の合併症である血液の病気が見つかり、間もなく診断が下りました。次々と起こる予想外の出来事に当時は不安でいっぱいだった気がします。
そんな息子も生後1ヶ月程入院してからは大きな病気をすることなく、すくすくと愛らしく、優しい子に成長してくれました。それだけでも嬉しいことなのですが、ゆっくりすぎる成長には悩むこともたくさんありました。
そんな時「個育て」という言葉に出会い支えられました。一人一人の個性を大切に育むこと、親も自身の個性を育てること、そして何より我が子の可能性を心から信じること。息子には兄と弟がいますが、同じように育てているつもりでもそれぞれ違います。親の悩みもそれぞれです。そうだ、兄弟も息子も同じように苦手を補い、得意を伸ばし、個性を大切にしようと気持ちが楽になりました。
そうは思っても、障害のある息子の成長は未知の世界で、予想のつかない部分もあります。試行錯誤を重ね、3歩進んだと思ったら2歩下がったり、思い通りにいかなかったりすることだらけですが、その分、できた時の喜びはひとしおです。
日々の暮らしの中で、もっとできるように、といろいろな欲がでてきてしまうこともありますが、息子の「キャキャッ」という幸せな笑い声が絶えぬよう守っていきたい、それができる優しい世の中であって欲しいと願っています。
現在、息子は1年生。発達支援の母子通園から幼稚園を経て特別支援学校に入学しました。その時々にいろいろな方がサポートして下さり、関わっていただいた方には感謝の気持ちでいっぱいです。そして私自身も息子のお陰で出会えた人、できた経験で視野が広がったように思います。
そんな最強の「個育て」をこれからも楽しんでいきたいと思います。
息子とともに成長できた日々
息子はもうすぐ18歳、心も体も大きく成長しました。言葉が遅く不安だった乳幼児期、診断を受け、先が見えなかった幼少期、不安な毎日を支えてくれたのは理解ある保育園の保母さんや療育の先生方でした。
決して否定せず、できないことを責めるのではなく、よいところを見つけ伸ばそうとしてくれたあの日々があったから、息子は大きく成長したのだと思います。
その後、小学校、中学校と特別支援学級で学び、悩むこともありましたが、息子のペースで、ゆっくりですが確実に成長を感じる穏やかな日々を過ごすことができました。先生方には本当に感謝しています。
現在の青葉高等学園では、就労に向けた学びや実習を通し、あっという間に3年生になってしまいました。コロナの影響を受けた部分もあったと思いますが、先生や実習先の皆さんのご指導のおかげで様々な経験ができ、もうすぐ社会に踏み出そうとしています。あまり多くを語りませんが、最近は、息子なりに「働く」ということを意識している様子を感じ、親の方が不安になっているのかもと思うこの頃です。もちろん一度就労したらゴールではなく新たなスタートであることはわかっていますが、良いスタートが切れるよう、これからも一番近くで見守って行きたいです。
私は、「今の幸せが未来につながる」という思いをずっと心に留めて過ごしてきました。これは、息子の幼少期に出会って以来交流があり、私が尊敬する方の言葉です。将来の心配より、今が幸せであることを大事にしようというその言葉で前向きになれたことを鮮明に覚えています。息子のおかげで出会えたすべての人に感謝したいです。
息子はとても優しい子で、私は息子にたくさんのことを教えてもらいました。きっとこれからもそうなるでしょう。私たちのもとに生まれてきてくれてありがとうと伝えたいです。
息子はダウン君
店内で見知らぬ方と息子が互いに笑顔であいさつを交わしている。「あの人は誰なのかな」地域の店舗で買い物をしているとたまにあることである。
そしてその後、「お父さんですか、彼、いつも頑張っていますね。毎朝彼とあいさつをしているものですが、いつも彼から元気をもらっています。毎朝彼と会うのがとても楽しみなんですよ。」という内容の事を話される。
急な声がけのため、しっかりとした対応ができなくていつも申し訳なく思うのだが、その方が去られてからその方の言葉を思い出し、胸が熱くなる。「ああ、息子は地域の方に受け入れられて、見守られているんだな」「彼は自分で周囲と関係を作っていっているんだな」と。
息子が働き出して4年、毎朝職場まで歩いて通っている。そして道中いろいろな方とあいさつを交わしているようだ。
私たち夫婦の思いは、地域の方との繋がりを大切にして周囲から愛される障害者になること。そして、将来自立して生きていく力を持ってほしいというものであった。
そのため、地域の方からのお声がけを聞いて、「今までの自分たちが頑張ってきたことは間違っていなかった」と思えた。
ダウン症だと告げられてから、「育ちがゆっくりなだけで、しっかりと成長できる」という言葉を聞き、様々な経験を一緒にしてきた。私たちも頑張ったが、それ以上に周囲の方々から温かく見守ってもらえた。それも、彼が日々明るく頑張っている姿が周囲の方に認められているからだと思う。
息子が生まれたばかりの頃、ダウン症ということを認められない日もあった。でも今、彼は周囲に小さな幸せを振りまいてくれている。これからもみんなに愛される彼であってほしい。